蜂巣・弐

 ・・・増えました。


2001/03〜07
 異動。岩泉の山中より、実家へと戻る。かなり整理された荷物多し。(T-T)多忙につき、ほぼ活動不能。引っ越しの段ボールもさっぱり片付かず、家族に顰蹙を買う。ウィルスメールが届いたり、パソコンが壊れかけたり、ビデオの予約を間違えたり、おまけに暇は無かったりと、モチベーションが下がりっぱなし。(ToT)


2001/07/09
 今度の職場は街の中心部からは離れた丘の上、緑に囲まれた環境である。昨年は敷地内にオオスズメバチが営巣したとのこと。フッ・・・ダボギ・リザ
 それはともかく、最近、屋内に侵入するキイロスズメバチが増えた。建物の脇に生えたモミの木にボロボロの巣箱がかかっているのだが、その中にハチが巣を作ったのである。ハチは、本来鳥が出入りする穴は使わず、底の板がずれた隙間から出入りしている。モミの木には大きい毛虫がたかっているので、ハチに毛虫を捕ってもらいたいところである。個人的には放置したいが、やはり巣は取らなければならないのだろう。


2001/07/11
 帰宅が遅くなり、外がすっかり暗くなったので巣を取ることにする。(ハチは暗い中では飛ぶことができない。赤い光にも反応しない。前章参照)まずは準備。

 ・マグライト(フィルター赤) ・コップ ・ジエチルエーテル ・エタノール ・ビニル袋 ・革手袋 ・ティッシュペーパー ・ガムテープ(布テープ) ・ペンチ ・ポイズンリムーバー(毒の吸引機) ・抗ヒスタミン軟膏 ・念のため殺虫剤

 一人でできないこともないが、平らな場所で条件も良いので、もう一人残っていた同僚に手伝わせることにする。赤ライトを持っていてもらうだけだが・・・。
 スズメバチの巣を取ると聞いて、同僚は思いっ切り引く。至極当然の反応であろう。「刺されるとしても私一人だから」と説明して納得してもらう。これは嘘ではない。キイロスズメバチの巣の場合、夜間(今の時期なら日中でも)、4〜5mの距離なら充分安全圏だ。それにやっぱり両手が使える方が楽だ。
 ガムテープを貼り合わせて幅20cm,長さ50cm程の広さにする。職場の灯りを消す。コップにエーテルを注ぎ、ティッシュペーパーを浸す。厚手の革手袋装着。準備完了。
 離れた位置から同僚に巣箱下方の出入り口付近を照らしてもらう。貼り合わせたガムテープで、巣箱を下から包み込むように隙間を塞ぐ。中が騒がしくなるが、間を置かずに巣箱上部の鳥の出入り口にエーテルがしみ込んだティッシュを押し込みガムテープで蓋をする。後は隙間という隙間をガムテープで目張りする。針金をペンチで切って巣箱を取り外す。中からはわんわんと羽音が続いている。巣箱をビニル袋に入れてしばらく待つことにする。同僚には礼を言って仕事に戻ってもらう。拘束時間は10分程度といったところだろう。
 エーテルを使用してから30分近く経ち、反応が無くなってからビニル袋を開ける。ガムテープを剥がし、巣箱を壊して中の巣を取り出す。中にはハチが折り重なるように倒れている。今なら安全なところに巣を移して、そこで他の”害虫”を捕ってもらうという手もある。しかし、そんな場所の心当たりはない。エーテルで眠っているハチをそのままエタノールに落とし、死んでもらう。成虫は1匹の女王蜂を含め41匹。冬眠から覚めた女王蜂が最初に育てた働き蜂だろう。小さいものが多い。
 ソフトボール大の外被の中の巣は2層あった。幼虫、蛹が詰まっている。幼虫は大顎で巣の壁を擦り、餌を催促している。その音がはっきり聞こえてくる。だが、いくら催促しても、彼女達の母親も姉たちももういない。親姉妹の仇はすぐ前にいる私だ。


 今回は、革手袋以外は、ワイシャツにスラックスと、軽装だった。


2001/07/12
 巣を取ったことで感謝はされたがあまり気分は晴れない。


2001/07/13
 職場の敷地内に業者が来て薬を撒いた。モミの木からも指くらいの毛虫がぼとぼと落ちた。蜂の巣が大きくなれば彼女達が取ってくれただろう。


2001/07/14
 帰宅後、取って置いた巣の事後処理にかかる。幼虫、蛹を巣から取り出す。途中、腹部を食い荒らされた蛹を数体見つける。巣の奥にも食い荒らされたようなトンネル状の穴が見える。見ていると、2cm強のミルワーム状の虫が顔を出す。名前はわからないが何かの幼虫だろう(調査中)。招かれざる居候らしい。食われているのは蛹だけである。ハチは幼虫の時は餌をもらうために自分の部屋の入り口を開けておくが、蛹になるときは部屋に自分で蓋をする。おそらくこの物騒な居候は、幼虫の時点で手を出すと、成虫が異変に気付くので、密室ができあがるまで待って、安全な状態になってからゆっくり食べるのだろう。働き蜂は、部屋の向こうの妹たちの惨劇に気付かないまま、開かない部屋の前で待ち続けるのだろうか。
 この居候、自分のことは棚に上げて、腹が立ったのでつい潰してしまったが、後のために写真くらいは撮っておくのだった。(冷静に考えると、スズメバチ関連の書籍に、カギバラバチやネジレバネに関する記述はあっても、こいつについては触れられていなかった)冷静さを欠いていた。私は研究者向きの性格ではないようである。
 取り出した幼虫、蛹をどうするかといえば、食べるのである。散々書いておいて矛盾しているようだが。奪った命は無駄にしてはいけない。薬で殺したのではそれっきりだ。何匹か生のままでつまみ食いする。やっぱり美味い。後は保存する。塩水でさっと茹でる。幼虫の、糞が詰まった黒っぽい内蔵を爪楊枝で取り出す。砂糖と醤油で煮込んで佃煮にする。


2001/07/15
 できあがった佃煮を瓶に詰める。少々味付けを濃くしすぎた。ご飯には合う。試食したのは父親のみ。母親と妹二人は手を着けなかった。


2001/07/25
  職場の飲み会。話のネタに、蜂の子の佃煮を持って行く。意外に好評で参加者の7割が食べてくれた。



 ・・・続く、のか?



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