グロンギ族の殺人ゲーム

 グロンギ族は、ある一定のルールの元に、殺人をゲゲル(ゲーム)として制度化している。ゲゲル達成とそれに伴う昇格は彼等の大きな目標となっている。

 ゲゲルには種類(段階)がある。以下に各集団毎のゲゲル方法をまとめる。

(1)ズのやり方
 ムセギジャジャ(プレイヤー、一度に1人)には、ある制限時間内に一定数のリント(人間)を殺すことがノルマとして課せられる。殺人目標数と実際の数は石版状のドドゾ(ボード)に記す。犠牲者のカウントはグゼパ(腕輪・カウンターブレス)の勾玉状の付属物を移動させて行う。形式通り行われたズ集団のゲゲルで放映されているのは、バヅー(6号)が行ったもの(EP.5EP.6)だけである。この時の条件は、2日の制限時間内に81人のリント(人間)を殺すことであった。この条件はバルバ(バラのタトゥの女)が提示したが、「2日で81人」が「ズ」全員に当てはまるのか、ムセギジャジャ毎に異なるのか、条件をムセギジャジャが決めることができるのかは不明である。10号と11号の間にゲゲルを達成したガルメ(未放映)は「ズからメへ」昇格した。ゲゲルを達成した場合は上位のメ集団に昇格できるようだ。
 なお、グムン(1号)、ゴオマ(3号)の殺人(EP.1EP.2)はゲゲルを開始する前の事である。ザイン(22号)は離脱後、勝手にゲゲルを行った(EP.11EP.12)ので、この件は非公認である。
 メビオ(5号)の場合(EP.3EP.4)も、暴走であってゲゲルでは無い模様である。一応バルバは「ゲゲルゾ、ザジレスゾ」(ゲームを始めるぞ)と言っているが、EP.5では、バヅーが自分のことをババグドムセギジャジャ(ファーストプレイヤー)と言っている。
 ザインは特に条件については触れていなかった。非公認に関わらずカウントはしっかり行っており、ルールに関しては絶対的、厳格なものが感じられる。或いは虚偽申告はしないという本人のプライドか。

(2)メのやり方
 ムセギジャジャ(一度に1人)は、制限時間(特に断らない限り通常は2日だが、6時間等、各自が設定できる模様)内に何人のリントを殺すことを宣言し、ドドゾに記す。ドドゾがリント側(警察)に押収された後(EP.10)しばらくゲゲルは中断されたが、ザジオ製作のバグンダダ(カウンター:算盤状)完成とともに再開された。(EP.13) 犠牲者のカウントはズ集団同様、ムセギジャジャがグゼパを用いて行う。自己申告制を採っているが、グゼパを紛失した場合はやり直しとなる(EP.8のバヂス=14号)。
 殺人目標数は、(多分)2日で162人(EP.9EP.10:ギイガ=21号)、180人(EP.13EP.14:ビラン=23号)、6時間で72人(EP.17:ガドラ=25号)と、上昇の一途をたどっている。ただし、単純に殺人目標数=難易度とはなっていない模様である(EP.18EP.19のギノガ(26号)は144人)。EP.21EP.22のガルメ(31号)は、ゴ集団への昇格を狙うため、次の殺人予告を行うことで条件を厳しくしていたと考えられる。また、EP.23EP.24のガリマ(36号)のゲゲルは明らかにゴ集団への昇格を前提にしたものであったが、バルバ(バラのタトゥの女)が提示した条件は、18時間で288人というものであった。ガリマは更に、「ゴのやり方」として、電車内で香を用いて居合わせた乗客に「匂い」のマーキングを施した後、標的として探し出し、武器(大鎌)を用いて”狩る”という独自のルールを自らに課した。メ集団では他にも武器を用いた者が存在したが少数である(ギャリドのトラック、ガドラのチェーン)。
 結局、メ集団でゲゲルを達成したものはいなかったので、達成の暁にどのような特典があるのかは断定できない。ガリマのゴ昇格ゲゲル達成条件は、明らかに他のものより厳しい。例えばギイガやビランがゲゲルを達成したからといって、そのまますんなりゴ集団への昇格が認められるとは考えにくい。達成したゲゲルの難易度によって集団内のランク移動が行われ、一定ランク以上の者のみがゴ集団への昇格に挑戦できるシステムだったのではないだろうか?
 なお、毎回、ゲゲルの最中にクウガの「邪魔」が入るのだが、クウガは通常はゲゲルのカウントには入っていない模様である。バヂス(14号)は、クウガ1人=リント27人分という変則カウントをバルバに認めさせて、初めてクウガを標的にしている。(EP.8

(3)ゴのやり方
 ゴ集団の行うゲリザギバスゲゲル(セミファイナルゲーム)では更にルールが「高度」になる。ムセギジャジャは条件と殺害方法(武器を使用)を札に記して申告する。目標値はムセギジャジャが申告する場合と管理者側(バルバ)が指定する場合に分けられる。なお、ゴ集団は装飾品を武器に変える能力を持っている。

・ブウロ(37号)の場合
 東京23区を50音順、1区毎に9人ずつ、計207人を吹き矢(矢はペリット)で射抜いて、矢を正確に心臓表面に到達させ心筋梗塞を起こさせることで殺害する(EP.25EP.26
・ベミウ(38号)の場合
 革命のエチュード(ショパン作)の楽譜にそって殺害場所(プール、海水浴場)と人数を指定、零下150度の低温を発生させ、その極低温を鞭を伝わらせて犠牲者に心臓麻痺を起こさせて殺害する(EP.27EP.28)(最終的な目標値は不明)
・ガメゴ(39号)の場合
 殺害方法(指輪を変形させた鉄球を投擲)と条件(区画をルーレットの目で決定)はムセギジャジャ側で決めたようだが、制限時間と目標数についてはバルバが決定した(72時間で567人。人数/時間だけで考えると、ガリマのゲゲルの方が大変だ)(EP.29EP.30
・ジイノ(40号)の場合
 武器は二股の槍を使用するようだが詳細は不明(EP.30とEP.31の
・バダー(41号)の場合
 殺害方法及び条件(鋼の馬(バイク)から引きずり降ろし轢き殺す)は本人の申告だが、制限時間及び目標数(7時間で99人)はバルバの指定である。なお、バダーは最後の1人にクウガを指名していた (EP.31EP.32EP.33
・ジャラジ(42号)の場合
 私立緑川学園2学年男子生徒90人に死亡予告とともに鉤針状の装飾品を小さな針に変形させて刺し、4日後に脳内で針が元の形状に戻ることで脳を傷つけ殺害する(これを12日以内に行うが、針を刺してから死亡するまで4日かかるので、実行期間は実質8日)途中、犠牲者の1人が自殺した(さだめと違う死に方)のでこの1人はカウントされず、新たに転入してきた生徒を狙った(EP.34EP.35
・ザザル(43号)の場合
 爪の色(各色に塗り分けている)の順番に、その色の動く箱(タクシー、エレベーター、バス、電車等)に乗った人間を強酸性体液で溶かして殺害する(EP.36EP.37EP.38EP.39
・ジャーザ(44号)の場合
 ネット上に犯行予告をしてからその通りに大量殺戮を行う(剣を使用する剛力体にはなりたくなさそうだったので、武器は俊敏体の銛だけを使用するつもりだったと思われる)目標は5時間で567人(EP.40EP.41
・バベル(45号)の場合
 地下街の地上出入り口に大型車両を突入させ封鎖、閉じ込められた人間を殴り殺す(剛力体の専用武器はハンマーだが、使用したのはおそらく格闘体のベアナックルのみだろう)制限時間は不明、目標数は729人(EP.42
・ガドル(46号)の場合
 戦うリント(警察官)を電気の力を使って斬り殺す(最終的な目標数は不明。ボウガンもロッド(?)もキックも使えるが、警官に対しては剣のみ使用した模様)(EP.44EP.45EP.46

 ゲゲルの条件にはそれぞれのムセギジャジャの好みが反映される模様である。いかに楽しみこだわって殺すかに主眼が置かれているとも言えよう(嫌な書き方だが)。ズ、メの場合と異なり、ゲゲルの条件をリント側(警察)に推理されると途端に達成が難しくなる(条件に当たらない場合はゲゲル=殺人は行われない)のもゴの場合の特徴である。カウントは、ゲゲル監視人のラ・ドルド・グが実際に現場に赴き、バグンダダ(カウンター)を手に検分する。これに伴いグゼパ(腕輪・カウンターブレス)は必要が無くなった。

 なお、ゲリザギバスゲゲルに成功するとザギバスゲゲル(ファイナルゲーム)に進む。

(4)ザギバスゲゲル
 そのまま変換すると、「ファイナルゲーム」だが、公式資料ではそのまま「ザギバス・ゲゲル」として扱われている。(ゲリザギバスゲゲルも同様)
 ゲリザギバスゲゲルに成功した者がいなかったので、ザギバスゲゲルがどのようなものかは想像の域を出ないが、最強プレイヤーのン・ダグバ・ゼバ(第0号)との戦いを指す。ゲリザギバスゲゲルを成功させた者が複数存在した場合、ダグバの勝ち抜き戦となるのか、バトルロイヤル形式となるのかは不明だが、最後の1人になるまで続けられる。これに勝ち残った(生き残った)者1人が、「究極の闇をもたらす者」となる。これは、気の向くままの無差別大量殺人を指す模様である。EP.33ではバダーが「〜次はあんたを殺し〜」と言っている。この「あんた」は、バルバを指すとの見方もあった。しかし、バルバの背後の闇からEP.39と同様のダグバが発している咆吼(音)が聞こえる。おそらく「あんた」はダグバを指したものであろう。それにしても、最終的に、「究極の闇をもたらす者」ひとりが残って、その後はどうするつもりなのだろうか?

 ゲゲルに出かける前に、ゲームマスターとしての役割を持つと思われる(テレ朝公式サイトでは「ゲームを管理する側」と記述されている)バルバが、指輪を、ムセギジャジャである怪人の腹のベルトに押し当て、ひねる動作をする。何かのスイッチを入れているようにも、何かのエネルギーを注入(吸収?)しているようにも見られる。EP.20で、バルバが、「ゴの奴らに呼ばれた」ために不在となった際、ガリマが、「ゲゲルはしばらくおあずけ」と言っていることからも、指輪を押し当てる行為はゲゲルにおいて重要な意味を持つと思われる。公式回答はおそらく出されていなかったと思うが、「制限時間を設定して自爆装置のスイッチを入れる」との見方が有力である。

 ところで、グロンギ達はリントやクウガに対してどのような感情を抱いているのか?最初の内は、過去に封印されたことから根深い恨みを抱いていると思っていた。ザイン(22号)の「リントゾロゾボソグ〜!!!」や、、ギイガ(21号)が「リント」と話すときのみ表情からそれまでの冷笑が消える点(どちらもEP.10)等からの推測である。しかし、話数を重ねるにつれ、彼等はリントに対して、楽しいゲームの標的として、愛情に近い感情すら抱いているのではないだろうかと思うように変わってきた。乱暴な例えになるが、ハンターが鹿や熊に対して、釣り人がヘラブナやブラックバスに対して抱くような感情である。それ故に彼等は殺し方にもこだわりを持つのであろう(例えば、魚屋で買ってきた魚より自分で釣った魚の方が美味く感じるだろうし、難しい方法で余り釣れない魚を釣り上げた方が嬉しい。私も釣りは好きだが、釣り人が楽しむ魚の”引き”は、魚の側から見れば、恐怖に駆られての必死の抵抗である)。クウガに対しても、「ゲゲルを進める上での邪魔者」以上の認識はないように思われる。ゲゲル中に邪魔をされれば闘うが、それほどクウガを倒す(殺す)事に固執しているようには見えない。一度はクウガを徹底的に追いつめながらも不都合があればあっさり勝負を打ち切り、ゲゲルに戻る怪人すらいる。ペガサスフォームの能力を把握しきれず、混乱して殆ど戦闘不能のクウガを放って、ゲゲルに戻ったバヂス(14号・EP.8)が最も顕著な例である。全体の20%以上(ダグバ=0号が復活させた200体中40体以上)の怪人が倒されたにも関わらず、彼等がクウガに対し具体的な対策をとることはなかった。バルバに至っては「ゲームを程良く引き締める奴」(EP.27)とすら評している。結局、対戦を希望する(ガリマ、バダー、ガドル)ことはあっても、ゲゲルを成功させる障害となるクウガを何とかしようという意識は、彼等には無かったようだ(ただし、EP.29では、バルバが初めてクウガ殺害を促すともとれる発言をしている。この言葉を受けてガドルが殺すと言っていた「クワガタ」は、クウガも指すのだろうが、ダグバの意味合いも強いであろう)。確かな部分で、クウガを「ゲゲルの標的」として明確に殺そうとしたのは、バヂス、バダー(41号・EP.28)のみである。

 彼らは人間の死はもとより、仲間達の死に対しても冷淡な反応を示す。自らの死に対しても恐れているような様子はない(さすがにジャラジ(42号・EP.35)は怯えていた)。EP.1のように、ダグバ(第0号)が復活させてくれると思っているからなのであろうか?もっとも、超古代のクウガの対グロンギ戦は現代のクウガの「処刑」とは異なり「封印」であるが。
 それとも、自らの命のやりとりすらもゲームの感覚なのであろうか? いや、「コレクションボックス シナリオ集(小学館)」等での彼らの台詞(削除または変更された分も含めて)を改めて見ると、グロンギの(自らの)死生観は、「命知らず」という以上に、「俺は他の奴らとは違う」「この俺が死ぬはずはない」というものであるように思われる。

 EP.3において、バルバは、東京に、「グロンギの手がかり」があると言った。そこから、彼等に殺人ゲーム以外にも目的があるという想像の余地があったのだが、彼女が一条に語った「リントも我々と等しくなったな」という台詞、彼女が行っていたリント研究から推察するに、「手がかり」とは、グロンギのルーツのことだったようである(グロンギも元は人間である)。ゲゲルの目的については、最強者決定戦説(ほぼこれで決定か)、0号完全復活説、グロンギ王(神)召喚説、生物兵器実験説、遺伝病治療説、共存説(非常に魅力的な説なので可能ならば後でまとめてみたいのだが・・・もう無理か)等、多くの説を生んだが、自分の楽しみ、欲望を追求することはあっても、破滅的、刹那的なものであって、(自分を含め)一族の繁栄すら望んではいなかったようである。

 グロンギ達が何を望んでいたにせよ、リントと相容れるものではなかった。しかし、バルバが語ったように、最近、彼らに等しいリントも増えてきたようではある。


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